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気がつかない、フリ 平気だよ、大丈夫ってフリ。 歳を重ねるたびにいつのまにか、涙を流すのも忘れてソレが得意になっていた。 4.月明かりの夜 「んー!!今日はちゃんと早起き出来たねー偉いぞ、自分v」 昨日と違って、ちゃんと思っていた時間に起きられたことに満足し、は顔を洗いに洗面所に向かった。 「あぁ、おはよー。」 !! まさか、朝から家主に出くわすとは思っていなかったのでは驚いた。 「お、おはようございます。」 洗面所、終わったからどーぞ。そう言って、彼はリビングの方に向かっていった。 もちろんカカシは気配でが目を覚ました事に気がつき、あらかじめ洗面所にくると知っていて、そこにいた。 び、びびびっくりしたー。 まさか、朝から出くわすと思ってなかったからなー。 まぁ、はたけさんが家主だから居るのは当たり前なんだけど。はたけさんて、家でももう右目だけなんだな。 もちろん、と一緒に暮す前までは額当ても口布もしていなかったカカシだが、 素顔をさらす気などさらさらないことをは知らない。 あ!!!びっくりして昨日のお礼言うの忘れてた。 まだ、いるかな。 は急いで顔を洗い、着替えを済ませ彼の居るリビングへ向かった。 よかったー。まだいる。 カカシはリビングのソファに腰掛け新聞を読んでいた。 「はたけさん、あのー。」 「ん?なに?」 はたけさんは出ている右目だけを動かして前に立つ私のほうをちら、と見た。 「昨日、ありがとうございました、家具。ホント何から何まですいません。私ベッド使わせてもらった上に眠りこけてて気がつかなくて。すみません。」 ぺこり、とは頭をさげた。 「あーいいよ、別に。影分身にやらせたし。たいしたことじゃないから、気にしないで。」 が起きなかったのは、もちろんカカシが物音一つたてずに作業をしたからだ。 影分身で人手を増やせば、すぐに終わる。 それに、が居たところでかえって足手まといなだけだ。 そんなことを思っても少しも表情にはださない、カカシであった。 「ありがとうございます。あの・・・影分身って?」 「オレらが使う忍術の1つ、まーもう1人、オレが増えるってワケ。1人だけじゃなくてチャクラがあればどれだけでも出せるけど。」 「へぇー、便利なんですねー」 年末の大掃除とか、すぐ終わっちゃいますね。と彼女は彼女なりの便利を述べていた。 それに、ラク出来て私ならグーたらしちゃいそうです。 ・・・別にそういう使い方、普通はしないけど? 今回はたまたま人手が必要だったから、使っただけで本来ならこの忍術は陽動や敵の本質を見極めるまでの安全策として用いるものだ。 結局は自分のチャクラが減ることに変わりはない。 やっぱなんか、ズレてるよなーこの子。まー忍でもない子にチャクラうんぬん理解しろって方が難しいか。 でもなーんか、やっぱ調子狂う。 自分のペースを乱されるのは、カカシでなくてもいいものではない。 今日も早々と影からの監視に行こうとしたところ、 「はたけさん、朝ごはんは食べました?私、すぐ作りますけど。」 彼女としては、ごく自然に気を使ったに過ぎない。 しかし、カカシのにとってはそれは最も避けたい部分であった。 「あー、ごめん。いいや、オレもう時間ないし。それにいつも朝食べないから。」 ま!朝も、だけどねー。 「で、でも忍者って身体が資本なんじゃないんですか?朝食べないと身体に悪いですよ・・・?」 カカシの身体の事を思っては引かなかった、それがかえってカカシにをイラつかせるだけだった。 「なーに?オレにお説教?勘弁してよ。」 サン、アンタは何にも知らない異世界の人間でしょーよ? そんな判ったような口、きかないでほしーね。 にっこり笑っているカカシだったが、まとう空気が冷たい。 さすがに、これにはも自分の発言が不味かったということに、気がついた。 「あ!あ、の。・・・すみません、よけいなお世話ですよね。」 しゅん、としおれた花のように彼女はうなだれてしまった。 ・・・・自分としたことが。 つい、の発言にカッときて彼女が気づいてしまうほどの殺気を放ってしまった。 少し誤魔化すかのように、カカシは早口に言った。 「あぁ、ごめーんね?別に、オレのことは気にしなくていいから。サンは自分の好きなことしててちょーだいよ。ね?」 「あ、・・・・はい。すみません。」 もう、カカシが先ほどのような冷たい空気をまとっていないのが判ったので、は顔を上げた。 「じゃーオレ、任務行ってくるから。あとはよろしくー。」 「いってらっしゃい・・・。」 パタン、と玄関のしまる音がしては思わずペタっとその場にへたり込んでしまった。 ・・・・やっちゃった。 私ったら、ついお節介を焼いてしまった。はたけさんにしたら、信じてもないやつに世話焼かれたってウザイだけかもしれないのに。 でも、・・・でもしょうがないじゃない。色々してもらってばっかで。ちょっとくらい、はたけさんにお返ししたいって思うじゃないか。 好きなことって言われたって、うろうろ出歩いて疑われるのはヤダし。そもそも、木の葉のことを未だによく知らないだ。 がいた世界なら、休日にやりたいことはいっぱいあった。 次会ったら、謝ろう。 そして、お世話になってるのに私にはこれくらいしか出来ないんですって、そう言おう。 「いつまでも、落ち込んでてもしょうがないよね。 さ、て。朝ごはん食べて今日も掃除しようーっと。」 そんなを今日も玄関から出て行った後、影から監視していた。 ふーん、案外神経は太いみたいねー。 カカシはカカシで、感情に流されての本質を見失っていた。 その後も、その日は特に変わりなくは掃除にいそしみ、カカシはそれを監視するといったかんじだった。 その日から数日が過ぎ、相変わらずはカカシに夕食をつくり、 カカシはそれ以来、気遣うことも面倒になったのかキッチンのゴミ箱に捨てるようになった。 それでも、はカカシに食事を作った。 まるでカカシに、私を信じて欲しい。と訴えかけるように。 帰り方が判ったなんてこともなく、特に代わり映えのしない毎日を送っていた。 ただ、いくら男の1人暮らしにしては少し広いといっても、いい加減部屋という部屋のすみまでこれ以上なにをキレイにするのか、というほどになっていた。 なので、買い物のついでに本屋に立ち寄り(ラッキーなことに文字は一緒なので読むことが出来た。) 面白そうな小説を何冊か買って、暇つぶしに読んでいた。 こちらの世界にきてからの楽しみといえば、本を読むこととたまに買い物に外に出かけるくらいだ。 最近は、好きだった料理を作るのも食べることもカカシとのことがあってからひどく億劫だ。 そして、カカシが食事をゴミ箱に捨てるようになったことと、大きく変わったことが1つ。 あれから、3日も経つのにカカシに一度も会わない。 洗濯物が出されているので、帰ってきてはいるのだろうがそれも定かではない。 これは、どう考えても避けられてる・・・よねぇ。 どうしたもんか。 あの日の事で、ひどくカカシを怒らせたのなら一言謝りたい。 なんなら、火影様に掛け合ってここから出て行ったっていい。 ここは元々カカシの家なのだ。 すみません、はたけさん。 私、うっとおしかったですよね。 火影様に会いに行こう、と決めは急いで身支度をした。 アポもないまま会いに行っても会わせてくれるか判らなかったが、会ってくれるまで待とう。 どうせ、時間なら持て余しすぎるほどある。 いつでもおいでって、言ってくださったし・・・大丈夫よ、きっと。 世間が朝の忙しさを終えて一息ついたくらいの頃、は火影に会いに行った。 お付きの人?らしき人は、あきらかに一般人な私が火影様になんのようだ?といぶかしんでいたが、 ハイ、そーですかと帰る訳にもいかないので 「とにかく、火影様にが会いに来たと伝えてくだされば判ります。」と必死に訴えた。 しつこい私に、しょうがない。と思ったその人はようやく火影様に伝言をしてくれた。 すると、何でこんなヤツが?とでも言いたげな顔をしつつも、「着いて来い。」と言って先を歩いていった。 扉の前に来ると、男の人がコンコンとノックをして「連れて参りました。」と言った。 やや、あって「入れ。」と少しくぐもった声がドアの向こうから聞こえてきた。 お付きの人は、ドアを開けて目で入れと言った。 「失礼します。」 ペコリと頭を下げると、上から「おぉ、!よく来たのォ。」という暖かな火影様の声がして、はようやく顔を上げた。 「お忙しいところすみません。」 「いや、わしもそろそろ会いたいと思っておったところでの。まあ、座れ。どうじゃ、だいぶ木の葉の生活には慣れたか?」 「あ、はい。火影様にはお世話になってます。」 久しぶりの火影様の声にほっとした。 あぁ、この人は私を信じてくれている。 たったそれだけの事がこんなにも、安心することだったなんて。 「そうかそうか、前から気にはなっとったんじゃがのォ。つい忙しくて気にかけてやれなんだ。すまんの。」 「!いえ!!とんでもないです。生活の面倒見ていただいてるだけでも十分ですよ。」 慌てた私が少しおかしかったのか、クスクスと火影様は笑った。 「あぁ、あとあれから色々わしもさぐっとるのだが、どうにもの元の世界への帰り方はわからんくてな。・・・すまんの。」 「そうですか。いえ、お気持ちだけでも十分です。・・・帰りたいってのは、ありますけど。」 「何かわかったことがあれば、すぐにでも知らせをよこすから。それまでの辛抱じゃよ。」 「はい!ありがとうございます。」 こんなに自然に笑ったのは何日ぶりだろう。 前は、笑うことなんて意識もしてなかったのに。 その後は、お互いにお互いの世界のことを話した。 火影はチャクラやこの里の歴史から、団子のおいしいお店まで教えてくれた。 私は、こことの違いや、逆にあんまり変わらないこと、 自分の世界には忍者もおらず、遠くの国で戦争は起こってはいるが違う世界のようなものなので特に実感はない、というようなこと。 とにかく、当初の目的も忘れては久々におしゃべりすることの楽しさを味わった。 「さて、とつい話し込んでしもうたわぃ。?何か話したいことがあってきたんじゃろ?関係のない話ばかりさせてわるかったの。」 「あ、いえ。・・・あの、私も楽しくってつい。お忙しいのに、すみません。」 「それは、別に気にせずともよい。」 「ありがとうございます。あの・・・・。」 言いにくそうな私を見かねて火影様は助け舟を出してくれた。 後から考えれば、火影様ははたけさんの上司にあたる方だ。 はたけさんから何らかの話は聞いていたのかもしれない。 「・・・カカシとはうまくやっとるか?」 「!!!!」 その時の私は、びっくりした顔をしていたに違いない。 「あ、え・・・っと、そのことで相談がありまして。」 「ふむ、なんじゃ?なんでも言うてみぃ。」 「私・・・あの、だいぶこの里での暮らしにも慣れました。 だから、・・・・だから、私はたけさんのお家を出て1人で暮すことは出来ませんか?もちろん、私働きます。家事は得意なんです。 出来ることはなんでもしますから。」 「やはり、カカシとなんかあったのか?」 はたけさんは何も悪くない。悪いのはお節介を焼いた私の方だ。 「・・・・別にはたけさんは、よくしてくださってます。ただ、帰れる日がいつになるか判らない上、これ以上お世話になるのは悪いと思うんです。」 それから、アタシははたけさんが悪く聞こえないように、1人で暮したいということを必死に説明した。 「そうか、お主の気持ちはわかった。カカシとも相談してみよう。わしの方でも考えてみるから、少し待ってはもらえんか?」 「はい、ありがとうございます。無理言ってすみません。」 きっと、はたけさんは私が出て行くと言えば喜ぶに違いない。 「では、今日はこれで失礼します。」 「うむ、気をつけてかえるんじゃよ。」 「はい、ではまた。」 「?」 「はい?」 「こんな老いぼれでよかったらまた話し相手になりに来てはくれんかのォ。」 「あ、はい。ありがとうございます。こんな私でよかったらいつでも。」 失礼しました、とペコリと頭を下げては元来た道を帰っていった。 「カカシよ、そこにおるんじゃろう?」 一見誰も居ないはずの部屋に、火影は話しかけた。 「盗み聞きはよくないとは、思ったのですが。すみません。」 「まぁ、よい。で、なぜあの子をあそこまで追い詰める?」 追い詰める? 別に自分は、あの女が怪しいかどうか監視していただけだ。 「三代目、おっしゃる意味がわかりかねますが?」 「・・・お前にはめずらしく、物事の本質が見えておらんようじゃのォ。 写輪眼をもってしても、人の感情までは見抜けん。お前も人の子ということじゃ。」 それでもカカシには、三代目の言わんとしていることが掴めなかった。 「まぁ、よい。の事はわしが何とかする。お前にはさっそく明日からSランク任務についてもらう。よいな?」 ここまで特にに問題行動がなかったので当然、といえば当然だ。 それが火影との約束だった。 「御意。」 そう言ってカカシは、すばやく火影の部屋から出て帰路についているはずのを探すことにした。 オレが、本質を見落としているだと? どういうことだ?・・・・クソッ。 あの女が現れてからというもの、ろくな事がない。 感情は乱されるし、明日からはどうせキッツイ任務が待っているに違いない。 一方そのころ、はというと・・・ 火影様は私とはたけさんがうまくいってないの知ってたのかな? まぁでも、いいや。多分これで、1人で暮らすようになれば迷惑うんぬんも考えずにすむ。 今日はもう疲れた、帰ってゆっくりして寝よう。 とぼとぼと、帰り道を歩いていると少し遠くのほうからを呼ぶ声がした。 「さーん!」 「え?」 「こっちですよ、こっち!」 大きく手を振って呼びかけてきたのは、が迷子になったあの日に道案内をしてくれた彼だ。 「イルカさん!」 「あぁ、やっと気がついてくれた。どうしたんですか?なんだか、ぼーっとしてたみたいですけど?体調でも悪いんですか?」 イルカは不思議そうにの顔を見ていた。 「あ、いえ!別になんでもないですよ。ちょっと考え事をしていて。」 今の自分に出来る精一杯の笑顔で、なんでもないという風には笑った。 「そうですか、ならよかった。」 「また、お会いしましたねー。」 再び彼に出会えたことが、には少し嬉しかった。 今は、自分の事など知らない人と話すほうがよっぽど気がまぎれる。 「そうですねー。あ、さん。お昼はもう食べました?」 あ、そういえば火影様とすっかり話し込んでいてお腹が空いたのも忘れていた。 「そういえばまだです。」 「それならちょうどよかった!時間大丈夫でしたら、オレと飯食いに行きません?安くてうまい定食屋が近くにあるんですよー。」 にこっと爽やかな笑顔でそう言われては、イヤだと言える人はおそらくいないだろう。 それに、特に断る理由もないし・・・・いいか。 少しくらい、仲良くしたって。 これから、あの家を出て働くかもしれないのだ。接触どうのこうのいっている場合じゃない。 「イルカさんがよければ、連れてってください。」 そう言って、はイルカに負けず劣らずの笑顔で答えた。 「!!!さん、誘ったのオレの方ですよ・・・。」 の無邪気な笑顔にイルカは驚いた。 初めて会った時の困ってるかんじもかわいらしいと思ったけど、笑うとこんなにかわいいんだ・・・・ さっきの、少し憂いのある表情もいいと思ったけどこっちの方がよっぽど魅力的だな。 いつのまにか、そんなことを考えている自分が少し恥ずかしかった。 何考えてんだ!!オレ。まだ会ったばかりの人じゃないか。 「じゃ、じゃあ行きましょう。こっちです。」 「??」 急にドギマギしだした彼を少し不思議に思うであった。 イルカとの昼食は実に楽しいものであった。 イルカさんて、話しのネタが豊富でおもしろい人だなー。 アカデミーっていって忍者の学校の先生をしていると言っていた。 自分の失敗談から、手のかかる生徒の話しまで、色んな事を話してくれた。 会ったのは二回目だというのに、驚くほど打ち解けた2人の食事の時間はあっというまに過ぎた。 それまでの事など、束の間忘れてしまっていたほどに。 「オレ、そろそろ午後からの授業がありますんで。」 「もうそんな時間ですか?イルカさんて面白いからあっという間でした。」 「いえ、すいませんなんかオレばっかりしゃべっちゃって。」 「いえいえ、楽しかったです。料理もおいしかったし。」 「ホントですか?・・・・あの、さんさえイヤじゃなければ・・・その、また食事に誘ってもいいですか?」 「あ・・・・私なんかでよければいつでも誘ってください。」 どうせ、自分には楽しみにしていることなども特にない。 たまに食事をする程度なら、許されるだろう。 それに、彼も忍だ。火影様の部下であることに変わりはない。 「だから、誘ったのはオレのほうですって〜(笑 オレ大抵はアカデミーに居ますから、暇な時とか近くを通った時とか、いつでもいいんで寄ってってくださいね。 今度はさんの話、色々聞かせてください。」 「・・・・はい。」 私に話せることなんかあるだろうか。 引っ越してきたというのはうそで異世界から来た、とでも言うのか? そんな事言えるわけがない。そんなことを言ってしまえば、いくらこの親切な優しい彼でもたちまち私を怪しむに違いない。 だからといって、隠しながら彼との関係をこれからも続けていく自信はには無かった。 せっかく仲良くなったのに・・・。 「さん・・・・?」 急に表情が曇ってしまったが心配になって、イルカは思わず呼びかけた。 「どうか、しました?」 「あ、いえ。なんでもないです。ちょっとぼーっとしちゃって。」 えへへ、と笑う彼女は明らかに何かあるようだった。 今まで笑顔で、話していたのに自分が今度はの事を知りたいと言った途端、急に目線を逸らして気まずい表情を浮かべた。 まぁ、でも言いたくないことをやたらと追求するのもよくないよな。 少しづつ仲良くなっていけばいいわけだし。 「じゃあ、オレ行きますね。すいません、お家まで送ってあげられなくて。」 「いえ、まだ明るいですし。お気持ちだけで十分ですよ。」 それでは、また。と言ってお互い別れた。 それからは、どこかぼーっとしながら覚束ない足取りで家に帰った。 帰ってからずっと、カカシから与えられたこの部屋に居る。 ご飯も作る気にも、食べる気にもなれなかった。 いつの間にか辺りは真っ暗で、時間は何時なのかも知らない。 時計をみるのもなんだかどうでもよかった。 ただ、真っ暗な夜の空に浮かぶ月がキレイでは窓からそれを見上げていた。 カカシはそんなを窓の外から、本人に見つからないようにそっと見つめていた。 今日のは、いつもと違う。 楽しそうに火影としゃべっていたかと思えば、オレの話になると沈んだような表情を浮かべこの家を出て行くと言った。 中忍のうみのイルカと楽しそうに食事をして、はにかむような笑顔や時折照れるようにしていたかと思えば、帰り際急に泣きそうな表情になった。 それから、危なっかしい足取りでフラフラと家に帰ってきたかと思えば、いつも楽しそうに料理をして幸せそうにご飯を食べていたのに、 今日はメシも食わずに、窓の外をぼーっと見つめている。 なんなんだ。 このみょうに胸がざわつくかんじ。 オレは、今までこの女にムカついていたはずだ。 これまで、を影から見ていて、無邪気に笑うかんじとか、争い事なんて見たこともありませんて感じの平和そうな顔。 ちっとも周りなんて警戒してなくて、きっとはなっから疑うなんてこと知らないんじゃないだろうかってほど無防備で。 感情を殺すように、訓練されたオレらとは違って表情はくるくる変わる。何考えてるかなんて、顔を見ればだいたい判った。 ちょっとくらい問題が発生しても、まぁいっか、大丈夫なんてつぶやいてすぐに立ち直る。 幸せそうにご飯を食べ、安心して眠る。 自分とは正反対で、すべてが自分には無いものでムカついた。 自分に素直で、まっすぐな彼女を見ていると自分がどれだけ汚れているか思い知らされた。 だから、・・・・だからオレはこんなにも彼女を頑なに拒んで否定していたのか。 なーんか、オレ。ガキみたいじゃなーい。 今までのイライラの原因がわかるとすんなりと、自分の気持ちがほどけていくようだった。 しかし、ようやくイライラの原因がわかったにも関わらず相変わらず胸がざわざわとした。 なんだろう、いつもと違う元気の無いが妙に気になる。 その時だった。 今までぼーっと月夜を見上げているだけだったの瞳から一筋の涙がこぼれたのは。 「!!!!」 ・・・・驚いた。 この子も泣くことがあるんだ。 火影の言っていたの本質とは、このことかもしれない。 無邪気に笑って、楽しそうにしていたのは無理をしていたからかもしれない。 まぁ、いっか。大丈夫だ、とつぶやいていたのは、あまり考えないようにして自分に言い聞かせていただけだったのではないだろうか。 そう思ったら、いてもたってもいられなくなった。 急に自分はどうしたんだとも思ったが、きっと自分が泣いていることにも気づいていないのではないか、 と思うほど静かに泣く彼女の涙を拭ってやりたいと思った。 ただ、目の前で女が泣いているだけなのに。 どうしてこんなに胸が締め付けられるような気持ちになるんだ。 カカシは先ほどまで、イラついていた自分を忘れ に泣いてるよ、と教えてやりたくて急いで玄関にまわった。 家に入ると靴を脱ぐのももどかしくて、 慌てて額あてとベストを脱ぎ捨て、 いつもはなんてこともないのに、今は妙に息苦しく感じる口布をさげた。 気づけば、音もなくの部屋の前に立っていた。 どうしよう。 何て言ってやればいい? んー。 ま、考えてもしょうがないか。 そっとカカシはの部屋のドアをあけた。 中を見ると、入ってきたカカシに気づかずには窓の外を眺めている。 ふぅ。とそっと息を吐き、カカシは静かになるべくを驚かさないように声をかけた。 「サン?」 「!!!」 急に名前を呼ばれて、びっくりして声のした方をみると そこにはずっと避けられていたはずの、家主であるカカシがいた。 「あ、・・・・はたけさん?あの、・・・・どうして?」 ここに、という言葉は小さくてほとんどカカシには聞こえなかった。 「サンが、泣いてるよーな気がしたから。」 「え・・・?あたし。泣いてる・・・?」 そっと確かめるように目元に手をあてたは、自分がいつのまにか涙を流していることに気づき慌てた。 「あ、あの・・・・これは。違うんです。別に泣いてるとかじゃなくって・・・・わっ!!??」 必死に言い訳を探していただったが、その言い訳は口から出ることはなかった。 窓の前に座っているのそばにカカシがやってきて、ひざをついたかと思えば、急にの腕を引き抱きしめたのだ。 「あっ、あの!はたけさん?!」 カカシに抱きしめられているということは、腕を引かれたかと思ったら目の前が急に真っ暗になった事で理解したが それ以外は状況がよくわからなかった。 なんで、はたけさんに抱きしめられてるんだろ・・・? ようやく落ち着いたは、こうなった理由をカカシに聞こうと思った。 声を発そうとすると、カカシはそれを悟ったかのようにゆっくりと腕をほどき、今まで自分の腕の中にいたを見た。 「サン。」 「はい。」 「自分が泣いてたって、知ってた?」 「え、あっと・・・・気づきませんでした・・・・」 「今まで我慢してたんでしょ?」 「別に・・・そんなことはないですよ。」 今日のはたけさんは変だ。 急に部屋に入ってきたかと思ったら、自分が泣いている気がしたと言うし、 今まで冷たい目や拒絶するような反応しか見たこと無かったのに。 なのに、今はこんなに優しい目をしてる。 どうして・・・・?てっきり、はたけさんには嫌われてると思ったのに。 「どうして・・・?どうして今日はそんな目をするんですか?」 「大切なことに気がついたから。それに、」 「それに・・・?」 今度は壊れ物でも扱うみたいに、はたけさんはそっとアタシを抱きしめた。 「こうしたら、見えないから。・・・だから、泣けば?」 ね?そう言ってはたけさんは小さい子をあやすみたいにアタシの頭をぽんぽんとなでてくれた。 あ・・・・どうしよう。 泣くつもりなんてないのに。 勝手に・・・涙が溢れて止まんない。 そっと、背中をなでてくれるはたけさんの手は、とっても温かかった。 「うっ・・・・・う、私・・・ふ、うぅ・・・」 「ん?」 「ずっ・・・・と、ふ・・・不安で。・・・ひっく」 「うん。」 「この・・・まま、っく・・・帰れなかったら、とか。」 「うん。」 「自分は・・・な、何のためにここにいるんだろう・・・とか、考えても。・・・っく、答えは・・・出なくって。」 「うん。」 「怖くて・・・うっ、なるべく・・・考えないように、大丈夫って自分に言い聞かせてきたんですけど・・・ぅっ」 「うん」 「今日・・・この状態はいつまで続くんだろうって思ったら・・・っく、なんだか全部がどうでもよくなっちゃって・・・」 「うん」 その後も、泣いてぐしゃぐしゃになりながらも、不安な気持ちとか 考えないように、知らないフリをしてきた気持ちを はたけさんは肯定も否定もせず、ただ背中を優しく撫でながらずっと聞いていてくれた。 気がつくと、私は自分のベッドにいた。 あのまま、泣きつかれて眠ってしまったらしい。 ・・・どうしよう。 昨日、はたけさんベッドまで運んでくれたんだ。 どういう顔で会えばいいんだろう。 今まで、てっきり距離を置かれていると思っていたのに 昨日のはたけさんは違った。 どうしたんだろう。 昨日は、アタシが弱ってたから優しくしてくれたのかな・・・? とりあえず、いつまでも自分の部屋に居る訳にはいかなかったので、 思い切って着替えて洗面所によってから、リビングに行ってみた。 「・・・・?」 きょろきょろ、と辺りを見てみたが誰も居ない。 なーんだ。はたけさん、居ないんだ。気合いれて損したなー 「ん・・・?」 机の上に紙がのっていた。 自分は昨日書置きを残した覚えはないはずだったが・・・・? おそるおそる見てみると 『いままでは、ごめーんね。しばらく任務で空けます。カカシ』 という達筆とすみっこにはへのへのもへじが描いてあった。 「ぷっ!へのへのもへじって・・・。」 畑の案山子じゃないって自分で言ってたのに。 マークみたいなもんかな? それにしても、なんだか達筆な書面とやっぱりよく掴めないはたけさんと、このへのへのもへじがなんだか 繋がらなくて妙におもしろかった。 「あはは、変なのー。」 帰ってきたら、また少しは自分と向き合ってくれるだろうか。 「今度は、アタシの作ったご飯食べてくれるかなぁ。」 なんだか、次にカカシに会うのが待ち遠しいような、気恥ずかしいような 妙な気持ちだったが、自然と心はすっきりとしていたであった。 カカシ先生がついにさんとの距離を縮め始めましたよv 最後の方はずっと書きたかった部分だったので、思わずPCにむかってニヤニヤとしてしまいました。 人に優しくされると、なんだか泣いてしまう時ってないですか? それに、色々慰められるより話を聞いていてくれるだけで ワタクシは気持ちがすっきりします。 聞かされている方はウンザリかもしれませんが(笑 とりあえず、これからはしばらくイチャイチャしたものになると思いますが、 実はお二人にはもうひとやまほど越えていただこうと考えております。 それにしても、どんどん1話が長くなっていってる気が・・・・(汗 きゃーそこの方!見捨てないでくだされ! では、次回もがんばりまーす! |